不妊治療には人工授精は身近で現実的な不妊治療法とされています。
人工授精とは 一体どういう治療をさすのでしょうか。
それでは、人工授精について見ていきましょう。
人工授精とは
人工授精とは、精子を子宮内へ直接注入し、卵子と精子が出会う確率を高める不妊治療の一つです。「人工」というだけに専門家の手を借りるのは確かですが、不妊治療の中でも自然に近い受精方法といわれています。
不妊治療は医師の方針によってアプローチも多様ですし、インターネットや本でも情報があふれているため、混乱することがあります。流されずにどのような不妊治療が自分たちに合っているかを判断したり、よいタイミングで方向転換していくためにも、不妊治療や人工授精について理解を深めるとともに、夫婦で大切にしたいこと(目指したいゴールと可能性のある選択)を共有することが大切です。
人工授精には次の2種類あります。
配偶者間人工授精(AIH)、つまり、妻の卵子、夫の精子で行う人工授精と、
非配偶者間人工授精(AID)、男性側に無精子症や精子死滅症、無精液症などの診断を受けた場合に選択肢としてあげられる治療法です。
次に人工授精の流れですが、ここでは、配偶者間人工授精(AIH)について紹介します。
まず、検査で女性側の排卵の時期を予測します。次に、男性が自宅かクリニックで精液を採取し、医療機関に提出します。この時の注意は、精液の温度を体温程度に保つことです。温度によっては精子が死んでしまうためです。持参する際、ブラジャーの中や、下着の中に入れるなどして、肌につけるようにすると温度を保てます。
医療機関が精液を預かったら、精液の中から、運動性のよい精子を残す作業に入ります。具体的には、遠心分離し、精子洗浄培養液での洗浄の手順が踏まれます。
これらのステップを経てようやく人工授精に移ります。調整された精液をチューブを使って女性の子宮に注入します。このとき、女性側には痛みなどはありません。処置も1?2分ほどですので苦痛もほとんどありません。あとは、約30分安静にすれば、以降は日常生活に戻れます。
副作用として感染症や軽度の下腹部痛、少量の出血などがありますが、これらは抗生剤などの使用で予防したり、経過観察で様子をみれる範囲がほとんどですので、多くの場合は心配はいりません。
その他、重大な合併症としては卵巣過剰刺激症候群と呼ばれるものがありますが、5%の発生頻度と多くはありませんし、早期発見できれば薬を中止することで改善することが多い為、下腹部が張る、吐き気がする、尿が減ったなどの兆候に気をつけることが大切です。
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その他、多胎妊娠も心配される方もいらっしゃると思います。しかし、技術の向上で避けられるようになってきています。
人工授精でどれくらい妊娠の可能性があるか ?
人工授精で妊娠はどのくらい期待できるかが気になる点です。人工授精での妊娠率は5?25%程度と幅があります。ちなみに、人工授精は1回だけではなく、何回かトライしますが、妊娠されるカップルの9割が4?6回目までに妊娠していることが多いです。
治療の統計として、データを公表している医療機関の数字を見ると、5?6回目の人工授精の妊娠率がぐっと減っていることに気づかれると思いますが、これは、回数を重ねると妊娠率が下がるというわけではなく、人工授精を受ける人の数が少なくなるというのが主な原因です。9回目くらまでは、それほど妊娠率は落ちないと言われていますので、可能性が残されているなら、トライしてみるのも一つの手です。
混同しやすい人工授精と体外受精、どう違うのか ?
人工授精は前述の通り、女性の子宮に調整した精子を注入する方法です。対して体外受精は、男性から精子、女性からは卵子を取り出し、身体の外で受精・培養した卵子を女性の子宮内に戻す方法です。
高齢で妊娠を望まれる場合は、早めに体外受精に進む判断も時には必要です。残された時間のなかでの適切な判断が、妊娠の確実性を高めることになるからです。もちろん、体外受精でも100%妊娠できるというわけではありませんし、人工授精や熟練した医師の指導の元、タイミング法で妊娠できるカップルもいますので、治療法の見極めが重要です。
方向転換する潔さも大切
先端技術のニュースがあると希望が与えられるものです。しかし、「もうそれしかない」と思い込んで合わない治療に固執してしまったり、自然な受精にこだわって貴重な時間を費やしてしまっては本末転倒です。一つの治療を何度か繰り返しても妊娠しないときは、きっぱりと方向転換する潔さも必要です。
この治療方針の判断について悩ましいのは、医療機関によって方針が異なる点です。不妊治療についての見解や方針は、ドクターによって多種多様です。人工授精をできるだけたくさんやりたいとか、体外受精に早く進みたいとか、ご自身の希望や経済的な状況、それらが医療機関の理念や方針とマッチするかどうか、医師が柔軟に提案してくれる産婦人科か、など多角的に見て産婦人科を選びましょう。また、信頼できる病院だったとしても結果が出ない場合は、治療方針が体に合わなかったと判断し、転院することも考慮しましょう。
人工授精はセックスレスやEDのカップルで選択する人が増えていますが、不妊治療として身体への苦痛の少なさや経済的な点からも、身近で現実的な選択肢と言えます。人工授精以外にも選択肢はあることを前提として、トライしやすい治療法の一つとして正しく理解し、不安が先行しやすい不妊治療もしなやかに乗り越えて行きましょう。